【GM】 ■■■■■■オープニングフェイズ■■■■■■
【GM】 ■■■■■■シーン1/悲しい思い出■■■■■■
【GM】 シーンプレイヤーは憲一ですが、宏美も自動登場です。
【GM】 京子の墓参りの帰り。
【憲一】「……僕、基地に来る前の知り合いとか、もう誰もいないんだ……。家族も、友達も、みんな……」宏美お姉ちゃんと手を繋いだまま、肩を震わせながら喋る。
【憲一】「僕の住んでた所は……もう、何も無いの。ただの、荒れ地に、なってる……」苦しそうに、一つ一つ、言葉を吐き出す。
【宏美】 憲ちゃんの話を……無言で聞いてる。
【宏美】 故郷をなくし、自分を知る人をすべてなくして……憲ちゃんがどれだけ辛かったか、想像でしか推し量ることができない……それが、余計悲しかった。でも……。
【憲一】「思い出すの辛いし、苦しいけど……宏美お姉ちゃんに、全部……知ってもらいたいんだ……」涙に濡れた瞳で、宏美お姉ちゃんに笑い掛ける。
【憲一】 無理して笑おうとして、引きつった、とても寂しそうな顔になっている事に、自分じゃ気付いていない。
【宏美】「憲ちゃん……」また泣きそう。でも、憲ちゃんより先に泣き出すわけにはいかない。
【宏美】 憲ちゃんの、寂しげな笑顔を見て、(憲ちゃんが、こんな寂しい笑顔を浮かべなくて済む様に……心から笑える様にしてあげなくちゃ……)
【宏美】「……憲ちゃん」涙は引っ込んだ。憲ちゃんを慈しむ様に微笑んで。
【宏美】「じゃあ、この街が、瑞穂市が、憲ちゃんの第二の故郷だね。……今はまだ、そう思えないかも知れないけど……」
【宏美】「あとね、憲ちゃんに言いたいことがあるんだ」
【宏美】 憲ちゃんの話を聞いていて、自分も、父が亡くなった時のことを思い出した。今の憲ちゃんは……あの時のあたしに似てるから。
【宏美】「京子ちゃんのこと思い出して、憲ちゃんが辛い顔してたら……きっと、京子ちゃんも辛いよ。あたしも、お父さん死んだ時、ずっと泣いてた」
【憲一】「そう、かもね……。でも、まだ……忘れられないから……そうは、すぐに思えない……。ごめんなさい、お姉ちゃん……」少し、遠い目をして、呟く。
【憲一】「京子ちゃんはね……隣りの家に住んでた、幼馴染みで……僕の、初恋。」寂しげな笑みを浮かべながら。
【憲一】「ずっと……ずっと、近くにいるのが、当たり前だと、思ってたから……気持ち、伝えてなくて……。伝えられたのは、左腕だけになってから」
【憲一】「京子ちゃん……手を繋いで、一緒に帰ろうとした所で、天使のせいで壊された校舎の下敷きになって……左腕だけになって、死んじゃった……。何も出来なかった自分が、情けなくて、悔しくて……ひっく……」再び嗚咽を漏らす。
【宏美】「辛いよね、憲ちゃん……」嗚咽し始めた憲ちゃんを、ぎゅうっと抱き締めて、背中をぽん、ぽんと叩く。
【宏美】「腕一本、か……うちのお父さんの時みたい、状況は違うけど」
【宏美】「でも憲ちゃん、勘違いしてる。忘れるんじゃない、忘れちゃ……だめなんだよ」
【宏美】「うちのお父さんはね、アペルギアドライバーで、歴戦の機械化兵だったんだ。あたしも、そんなお父さんに憧れてたよ」
【宏美】「でもね、去年……そろそろ丁度、一年になるかな……天使兵と相討ちになって、自分も天使化しかけて……自殺したの。唯一動く右手で、銃で頭打ち抜いて」……さすがに一年も経つと、悲しいけど……涙が出てくる程、辛くない。
【宏美】「お母さんは、管制室でお父さんの最期の言葉を聞いたんだって。あたしは……お父さんが死んだの、右手だけ帰ってきたの、信じられなくて、格納庫に忍び込んで……見ちゃった」
【宏美】「コクピットの座席と融合して、頭半分吹き飛んで……死んでるお父さんを」
【宏美】「その後、しばらく泣きっ放しだったよ。でも、気付いたの。お父さんとの思い出は、良いことも、楽しかったこともたくさんあったこと。お父さんのこと思い出す度に悲しんでたら、その楽しかった思い出はどこに行っちゃうんだろう……」
【宏美】「だからね、憲ちゃん。京子ちゃんとの思い出は、そんな悲しいものだけじゃないよね。楽しかったことも、いっぱいあるよね。だから……そういう思い出も、ちゃんと思い出してあげてほしいの」
【宏美】「そりゃ、最初のうちは、それすら悲しくなっちゃうから辛いけど……」
【宏美】「でも、憲ちゃんなら、大丈夫だって思ってる。いつか、京子ちゃんのことも、ちゃんと胸に納めて歩いていけるって」
【憲一】「お姉ちゃんって、強いんだね……。お父さんが、そんな事になっちゃったのに……。」しゃくり上げながら、宏美お姉ちゃんの顔を見る。
【憲一】「ぼ、僕……お姉ちゃんみたいに、強くなれる様に……京子ちゃんの事、そうやって思える様に、頑張ってみる……。」小さな、だけど、僕には、物凄い勇気のいる、決意。
【宏美】 (違う、あたしは強くないよ、憲ちゃん……。口ではそう言ってるけど、まだ、本当には立ち直ってないんだから……)
【憲一】 そして思う。『宏美お姉ちゃんは、僕のこと、本当に心配してくれてる……。お姉ちゃんと、離れたくないよ……』
【GM】 それは、恋と呼ぶには、まだ遠いけれど。
【憲一】「だけど、僕……何もかも失っちゃったから……だから……宏美お姉ちゃんと、セラピアお姉ちゃんは、僕にとって……唯一とも言える、凄く大事な、大切な人なの……。だから……僕の前から……いなく、ならないで……!」そこまで言うと、宏美の腕にしがみ付き、泣き出す。
【GM】 その時の憲一は、まるで、捨てられた子犬の様な、目をしていた。
【宏美】 憲ちゃんの頭を、優しく……優しく撫でながら。
【宏美】「大丈夫だよ憲ちゃん……。あたし、憲ちゃんの傍にいるよ……。セラピアちゃんだって、そう。いつだって、憲ちゃんのこと、受け止めてあげるから……」
【宏美】 ……あたしにできるのは、それしかないから。
【憲一】「うん……。」優しく撫でられて、安心して、溜め息を漏らす。
【憲一】『宏美お姉ちゃん、ありがとう……。』
【GM】 シーン切ります。