今回予告 キミは幼馴染の少女と一緒に、ギアドライバーとして選ばれ、戦って来た。 だがある日、天使との戦いで、彼女はキミを庇って命を落とした。 失意のキミに、更なる追い討ち。 彼女の天使核を使い、彼女の記憶を持った完全機械化兵が、後任のナビゲーターとなった。 だが……彼女は、キミのことだけ、全く憶えていなかった。 勿論、死んだ時の記憶も。 取り戻せない、欠落した記憶。 では彼女は……何者なのか。 エンゼルギア天使大戦TRPG 『存在理由と存在意識』 Da sein,Du bist dort. Aber,Ich bin nicht in dir... ハンドアウト PC1:ギアドライバー/ナビ:笠居ちせ(かさい・ちせ) ちせはキミの幼馴染であり、ナビゲーターだった。 彼女は、天使との戦いでキミを庇って、命を落とした。 その筈だった。 だがキミの新しいナビゲーターとして紹介されたのは、死んだ筈のちせ。 しかし。彼女はキミのことだけ、全く覚えていなかった。 嘘だと言ってよ、ちせ…… シナリオダーザイン【ベート8−16からの忘却】 PC1はクライマックスにて、ヴィークルなしで戦闘をする可能性がある。 あくまで可能性の為、必須ではなく、また無駄になることもあるので注意。 以下に推奨オーギュメント・特技等を記す。 オーギュメント:《シメオン》《ブリアー》《イェツィラー》 ダメージ特技:《呪法爆弾》《支援要請》《招魂歌》《鎮魂歌》《怨敵調伏》《蟲使い》《裏技の達人》 その他特技:《距離外射撃》《呪詛返し》 ※《春風の楽》は機体特技の為、シュネルギアに搭乗していなければ使用出来ない。 PC2:ウィザード キミは同僚である、ちせの父親の笠居太郎の実験を手伝い、ちせの復活に協力した。 本人の脳、そして天使核を用いた完全機械化兵……要はT−Xと全く同じことを行い、ちせはベート8−16という名を与えられて、復活した。 T−Xのように当初記憶を忘れる、ということもなく、ベートはちせの記憶を持っていた。 ただ一点、PC1に関する、すべての記憶を除いて。 その為、キミは太郎に依頼され、ベートを監視することになった。 ベートの欠落した記憶を取り戻すのは、果たして是か非か。 シナリオダーザイン【笠居太郎からの困惑】 PC3:ギアドライバー/ナビ:桂 ちせの死と丁度入れ替わる形で蘇った桂。 桂もキミも、勿論生前のちせを知っている。 だが、キミは桂から妙な話を聞いた。死んだ筈のちせが、司令室に向かう姿を見た、という。 残念だが……それは幻覚でも何でもなく、真実だった。 ふざけるな。人の命を、何だと思っているんだ。 シナリオダーザイン【遠山桂からの困惑】 PC4:ソルジャー キミ達機械化兵の小隊は、天使レミエルに痛手を負わせ、撤退させることに成功した。 だがあくまでも撤退させただけで、撃破に至っていない。 子供達を守るのが自分たちの仕事なのに、ちせを守れなかった。 次こそは、必ず倒さなければ。 自分たちの存在意義が問われる前に。 シナリオダーザイン【部下からの失意】 本シナリオにおいて福音フェイズは、PCの選択によっては発生しないし、また必須ではない。 笠居ちせ 本シナリオオリジナルのナビゲーターである。 優しく周りを和ませてくれ、可愛がられていた、みんなのアイドルだった。 ※シンガーという訳ではない 家族は父親の太郎だけ。母親は、ちせを産んだ時に亡くなっている。 一人称:わたし 二人称:あなた、名前+さん、PC1のみ名前+くん 能力値は、【PC1の最も高い能力値】+3、【聖霊】+2。 もし【聖霊】が最も高い場合は、【肉体】【感覚】【理知】+1、【聖霊】+2とする。 【ナビゲーターからのダーザイン】は【笠居ちせからの感情】となる。 ナビゲーター専用オーギュメントは、特殊オーギュメントから選択すること。 ちせの完全機械化兵としてのコードネームはベート8ー16(アハト・ゼヒツェン)。 条件を満たさない限り、【ベート8−16からの感情】をナビゲーター専用オーギュメントの代償として使用することは出来ない。 通常のオーギュメントであれば可。 条件の開示は、クライマックスでの選択による。 場合によっては、開示自体がされない。 笠居太郎 ちせの父親であり、完全機械化兵の研究者の一人。 唯一の家族であり、最愛の娘であるちせを亡くし、失意のところをT−Xの奇跡を知った。 ちせを蘇らせる為に、兵器開発局に掛け合い、T−Xの資料を入手した。 一人称:私 二人称:君、名前+君 GMへ 今回予告の最後のドイツ語の発音(カタカナ表記の為、正確ではない) ダー ザイン、ドゥー ビスト ドルト アーバァ、イッヒ ビーン ニヒト イン ディーア ちせの性格、口調などについて 可能ならば、PC1の好みのタイプのヒロインを聞いておき、それをちせのRPに反映すると、PC1のモチベーションが上がるだろう。 オープニングフェイズ シーン数はマスターシーン込みで6シーン、その内PC1は2シーンあり、オープニングが長くなることをPLに先に伝えておく。 また、ベートと顔を合わせるのはミドルフェイズのシーン1となる。これも一緒に伝えておくこと。 シーン1 PC1とちせが死別するシーン PC1が意識を失ったらシーンを終了する。 また、シナリオダーザインはオープニングの最後のシーン、シーン6で渡すと伝える。 ちせはキミの幼馴染であり、ナビゲーターだ。 ある日の、天使との戦闘。 その日出現したのは、天使レミエル。 キミ達は劣勢に追い込まれ、レミエルに接敵された。 ちせ「PC1くん、早く天使から離れて!」 ちせ「あっ!ダメぇっ!」 レミエルの放った雷の刃が、コックピットを貫いた。 激しい衝撃と、ちせの悲鳴。 (PC1のアクションの後) だが、キミの意識は、ブラックアウトしていった……。 PC1に一言貰い、シーンを終了する。 シーン2 シーンプレイヤーはPC4 天使との交戦後の、部下との会話 帰還することを決めたらシーンを終了する PC1の撃墜後、キミは部下達と協力して、レミエルに痛手を負わせた。 部下その1:ウェッジ「強かったっすね、あいつ……」 部下その2:ビックス「どうにか、撤退させることには成功しましたが……代償として、失ったものが大き過ぎます。……笠居少尉は、俺達にも分け隔てなく笑顔で接してくれる、いい子でした」 ウェッジ「マジそれなー……。それにあいつ、撤退しただけだから、回復したらまた来ますよ」 ビックス「次こそは、我々の命に代えても、倒さなければなりません。……これ以上、子供達の悲しむ顔は、見たくありませんから」 ウェッジは部隊内のみに回線を繋ぎ直し「……そもそも、子供を戦場に出すことも、子供達に頼んなきゃなんない現状も、間違ってんすよ。いくら戦争だからって、自分よりも若い子供が死ぬなんて。俺達機械化兵だったら、そういう覚悟の上で、兵士であることを選んだんだから、ある意味自己責任、つーか」 ビックスも回線を繋ぎ直し「……お前なあ。死んでいい命なんて、ある訳ないだろ」 ウェッジ「……悪り、ちょっと失言だった」 ビックス「帰還しましょう、隊長。残念ながら、俺達には感傷に浸る時間がありません」 シナリオダーザイン【部下からの失意】 シーン3 マスターシーン 研究室のベッドの上で、一体の完全機械化兵が目を覚ます。 ベート「あれ?ここ……」 太郎「目が覚めたかい?名前は言えるかい?」 ベート「どうしたの、お父さん?わたしはちせだよ?」 太郎はベートの身体を抱きしめる。 太郎「よかった……成功だ……」 ベート「お父さん、痛いよ……」 太郎「……落ち着いて聞いて欲しい。ちせ、お前の身体は、完全義体……要は、完全機械化兵と同じ身体に、変わっている」 ベート「……え?」 太郎「お前は車に撥ねられて大怪我して、そのままだと死んでしまう為、身体ごと取り替えることになってしまったんだ」 ベート「……お父さんが、そうしてくれたの?」 太郎「ああ、勿論だとも。お前の命のを救う為には、どうしても必要な事だったんだ」 ベート「お父さんのする事なら、間違い、ないよね。えーと、助けてくれて、ありがとう?あれ……何だか、すごく疲れた……」 太郎「目を覚ましてすぐ、そんな事を聞かされてしまったから、疲れたんだろう。少しおやすみ」 ベート「うん……おやすみなさい。ふぁ……」 すぐに眠りに落ちるベート。 太郎「……実験の、第一段階は成功だ。ちせが落ち着き次第、第二段階に移行する」 シーン4 シーンプレイヤーはPC2 笠居太郎との会話 太郎の問い掛けに答えたら、シーンを終了する 研究室。 ちせの眠るベッドの横で、二人がひそひそと話している。 太郎「PC2君、ありがとう。キミの協力のお陰で、ちせが蘇った」 太郎「T−X、いや、遠山桂。奇跡の具現たる少女。彼女を見て私は羨み、そして嫉妬した。死者の復活という奇蹟、それをまさか人の手で成しえるとは」 太郎「その奇跡をもう一度と、私は兵器開発局に掛け合いT−Xの資料を入手した」 太郎「義体は最新型ではなく、安定稼働が見込め、予備部品も豊富な第8世代型にした。……私は、分の悪い賭けは嫌いでね。少しでも、成功率を上げたかったのだ」 太郎「だが……ちせの復活に成功はしたが、ちせがPC1くんの記憶だけを失う、この事態は想定外だった」 太郎「しかし、欠落した記憶を取り戻した場合に、何が起きるか分からない。記憶を取り戻させるべきなのだろうか、それとも……PC2君、君はどう思う」 太郎「そうか……済まないがPC2君、ちせの様子を観察し、報告してくれないか。ドライクロイツ所属の君にしか、頼めないことなんだ」 シナリオダーザイン【笠居太郎からの困惑】 シーン5 シーンプレイヤーはPC3 桂と会話するシーン 桂の最後の台詞にPC3が答えたら、シーンを終了する。 桂「おはよ、PC3」 食堂に向かうキミに、桂が声を掛ける。 桂「……また、君とこうやってたわいもない話を出来るようになるなんて、思わなかった。いやー、生きてるって素晴らしい」 彼女はT−Xとして戻って来て、遠山桂としての記憶を取り戻した。 桂「まあ全部、みんなのお陰だけどね。勿論、PC3にもすっごく感謝してる訳でして」 桂「ところでさ。……私が死んでる間に、ちせちゃんも亡くなった、って聞いたんだけど……」 桂「わたしさっき、司令室に向かう廊下で、ちせちゃんの後ろ姿、見たんだよね」 桂「まさかとは思うけど、わたしと同じように、ちせちゃんも……?だとしたら、うーん……」 桂「わたしが言うのも何だけどさ。いくら戦争に勝つ為、とは言っても、人の命を何だと思ってるのかね、上層部っていうか兵器開発局は」 シナリオダーザイン【遠山桂からの困惑】 シーン6 シーンプレイヤーはPC1 病室で目を覚ますシーン 新しいナビゲーターが配属され、PC1の専属となることを聞いたらシーンを終了する キミが目を覚ますと、白い天井が見える。 恐らく、病室のベッドに寝かされていたのだろう。 羽村「目が覚めたみたいだね。身体は動くかい?」 身体が、鉛のように重い。 羽村「……ちせちゃんが、天使の攻撃が命中する瞬間、ほんのわずかだけ機体を動かしたんだ。だから、キミは無事だった」 ちせのことを聞かれたら 羽村は首を振って「代償に、ちせちゃんは攻撃を直接受けたんだ。……すまない。ちせちゃんの負った傷は、手の施しようがなかった」 羽村「本当に、すまない。俺の、力不足だ」 PC1がリアクションしたら、以下の描写に移る。 あれから一週間が過ぎた。 キミはちせを失い、失意の日々が続いていた。 そこに、新しいナビゲーターが配属され、キミの専属になる、という命令をヴィヴリオから受けた。 なんでも、完全機械化兵だそうだが……。 最後にPC1に一言もらって、シーンを終了する。 シナリオダーザイン【ベート8−16からの忘却】 ミドルフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 ベート8−16が紹介され、PC1のことを全く覚えていない事を描写するシーン ベートがPC1のことを覚えていない、と発言したらシーンを終了する ここは長めのシーンになることをPLに伝えること。 ヴィヴリオ「……お前達に、新しい仲間を紹介する。ベート8−16(アハト・ゼヒツェン)だ。いや……笠居ちせ、と紹介すべきか」 ベート「えーと、身体が完全機械化兵のものになっちゃったから、完全機械化兵としての名前、もらっちゃった」 ベート「改めて。笠居ちせです。みんな、ずっと休んでてごめんなさい。もう、大丈夫だよ」 ベート「あれ?えーと……桂先輩?どうして、ここに……あの、すいません、亡くなった筈じゃ……」 桂「あはは……恥ずかしながら、帰ってまいりました。詳しい話は、あとでね。ヴィヴリオ大佐が、こっち見てるから」 ヴィヴリオ「理解が早くて何よりだ」 ヴィヴリオ「ちせには、PC1のナビゲーターに就任してもらう」 PC1がちせに話し掛けた ベート「あなたが、わたしと組むギアドライバーさんなんですね。はじめまして」 PC1がヴィヴリオに詰め寄ろうとした ベート「止めて、大佐と喧嘩しないで」 ベート「PC1さん、どうしてそんなに、悲しそうな顔をするの?」 ベート「ごめんなさい……あなたのこと、何も知らないの……」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン2 シーンプレイヤーはPC4、他のPCの登場は任意 ベートを囲んでの会話、その後ベートが去る 一通り台詞を読み終えたらシーン終了とする 部下達の会話は、PCが複数登場している場合、シーンが長引く為、適宜カットすること 待機室。 ベートがキミの部下達に囲まれている。 部下達には口裏を合わせるよう、伝えてある。 ウェッジ「良かったっすよー、ちせちゃん無事で」 ベート「みなさん、心配かけてごめんなさい。身体は変わっちゃったけど、元気です」 ビックス「あー……そうですね。でも元気だとおっしゃるなら、良かったです」 その言葉に、くすくす笑うベート。 確かに、ちせ本人とは笑顔も仕草も声も、何一つ変わらない。 ウェッジ「やっぱりちせちゃんは笑顔が一番っすよ」 ビックス「そうだな……みんなのアイドル、っていうのは伊達じゃないな」 ベート「わたしがアイドルだなんて、買いかぶり過ぎですよぅ」 その時、ベートに茜から電話がかかってくる。 茜「あ、ちせちゃん?検査の時間過ぎてるから、こっち来てくれる?」 ベート「あ、忘れてました、ごめんなさい!」 ベートは電話を切った後「すいません、検査があるの忘れてました。完全義体って、不便なこともあるんですね。行って来ます」 ウェッジ「いってらっすー」 ベートの姿が完全に見えなくなった後 ビックス「ベートさん、生前のちせちゃんと寸分変わりないですね……」 ウェッジ「ちせちゃんのお父さんすよね、義体の調整したのって。こりゃ天才だわ……」 ビックス「でも、このままでいいのでしょうか。PC1のことだけ忘れている歪みが、いつか現れます。経験上、最悪のタイミングで」 ウェッジ「オメー考え過ぎだよ。そん時、何とかすりゃいいじゃん」 ビックス「確かに、それはそうかも知れないが……注意するに越したことは無い。それに……」 ウェッジ「それに?」 ビックス「それを何とかするのは、俺達じゃない。PC1がやらなければならないことだし、PC1にしか出来ないことだ」 ウェッジ「マジそれなー。しっかし、責任重大だなあ、PC1」 ビックス「パートナー、だからな。……俺もそんなパートナーが欲しい……」 ウェッジ「お前、モテそうだけどな」 ビックス「理屈っぽくて嫌、とフラれたことが何度もあってな……」 ウェッジ「あー……正直すまんかった」 ビックス「とにかく隊長。我々はその時が来たら、PC1を全力でバックアップしましょう」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン3 シーンプレイヤーはPC3、全員登場 ちせの記憶がないことを強調するシーン 桂の最後の台詞を読んだらシーンを終了する 訓練。 PC4の指導の下、PC1とベートが訓練している。 PC2とPC3、そして桂はその様子を見守っている。 ちせの記憶を引き継いでいるだけに、ナビゲートについては全く問題ない。 それどころか、完全機械化兵になったが故に、生前よりも反応速度が上がり、前よりスコアは良いぐらいだ。 桂「ねえ、PC3。シミュレーターのスコア見て。明らかに、前よりも今の方が、スコア高いよね……」 桂「PC2さん的には、これは想定内の結果なんですか?」 シミュレータのドアが開き、ベートがPC1に声を掛ける。 ベート「凄いですね、PC1さん。一緒に訓練するの初めてなのに、こんなに息が合ってるなんて」 桂「あー……何と言うかこう、既視感が……わたしも同じようなこと、言ったなあ……」そう言いながら、こめかみを押さえる。 ベート「そんな顔、しないで下さい……わたしまで、悲しくなっちゃう……」 ベート「ごめんなさい……何も、覚えてないんです……」 ベートとPC1の会話がひと段落したら、以下の台詞を読み上げる。 桂「はて、どうしたものか。ちせちゃんのお父さんにでも、話を聞いてみるべきか。そう言えばPC2さんて、確かちせちゃんのお父さんの同僚だったよね?」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン4 シーンプレイヤーはPC2、PC1自動登場、PC3とPC4の登場は任意 太郎に話を聞くシーン 太郎の告白を聞き終えたらシーンを終了する 太郎「ちせの欠落した記憶なんだが、私も調べてみたんだ」 太郎「もしかしたら、ちせがPC1君の記憶を失ったのは、防衛本能から来るものかも知れない」 太郎「君の記憶は、ちせが死んだ時の記憶とも結び付いている。もし死亡した瞬間の記憶を思い出せば、ちせはパニックに陥るだろう。それだけで済めば良いが、もしかしたらショックで天使化する可能性もある」 太郎「あの子をもう一度死なせることだけは、絶対に出来ない。何の為にこんなことまでして、ちせを甦らせたのか分からなくなる」 太郎「私はいくら罵られようと構わない。私はただ、たった一人の家族である娘を、失いたくなかっただけなんだ」 会話を終えたらしたらシーンを終了する。 シーン5 マスターシーン 太平洋に浮かぶ、合衆国天使十字軍第七艦隊。 甲板上に記された召喚陣から、一体の天使がぞるりと現れる。 その姿は、先日出現し、ちせを死に追いやった天使レミエル。 一度天界に戻って傷を癒し、再び召喚されたようだ。 レミエルは凄まじい速度で、ヤシマを目指して飛翔する。 人間如きが、自らに傷を負わせた報復の為か。 それとも、神の摂理に反し、桂とちせが人の手で蘇った事が、気に入らないのか。 いずれにせよ、レミエルは飛ぶ。 ヤシマに滅びをもたらす為に。 シーン6 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 出撃前のブリーフィング ヴィヴリオが命令を下したらシーンを終了する 管制官「出現した天使の、エーテル濃度とエーテル波長の解析結果、出ました。先日交戦したレミエルと完全一致です」 ヴィヴリオ「ふん、傷が癒えたのだろうが、またあの天使を呼び寄せるとはな。この前のことが、よほど気に食わないのだろう。まあ、合衆国の考えも、天使の思考も分からんし、分かりたくもないが」 桂「天使レミエル。復活を待つ魂の管理者。なるほど、誰の趣味だか知らないけど、皮肉が効いてるね」 ベート「あの天使……初めて戦う筈なのに、知ってる気がする……どうして?」 ベート「え?初めてじゃ、ない……?うぅ、頭が、痛い……」 ヴィヴリオはベートの反応を見て、苦々しい表情を浮かべつつ「PC1。ベートに異常が見られたら、すぐに撤退するように。いいな」 ヴィヴリオ「ここで戦力を温存出来るような、生半可な相手ではないことは、皆も承知しているだろう。速やかに敵を討て。時間を掛けるな」 桂「時間を掛ければ、それだけちせの負担が増す……真意はそうでしょ、大佐?」 ヴィヴリオは無言を貫く。 桂「無言の肯定、ね。じゃあ、みんな行こう。フリーデン・インデアハント」 ヴィヴリオはため息をつきながら「……桂。私の台詞を取るな。では諸君、出撃せよ」 会話を終えたらシーンを終了する。 クライマックスフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 ベートが記憶を少しだけ思い出し、天使化の危機に陥る 共鳴判定を行う。 〈意志力〉で判定を行い、難易度3。 ヴィークルの修正値込みでの判定となる。 失敗した場合侵食1を受ける。 成功失敗に関わらずアガペーが3D6上昇、即座にパトスチット3枚を得る。 ベートは無条件で失敗する。 ベート「わたしは……PC1くんを、庇って……?あ、あぁ……あああ!!」 管制官「ベート8−16の体内エーテル濃度が急上昇しています!このままだと、天使化の可能性も!」 桂「……ま、予想通り、だね。自分を死なせた天使と交戦すれば、記憶の封印が綻ぶのは目に見えてた」 ヴィヴリオ「PC1、撤退しろ。ここでマスケンヴァル現象を起こさせる訳にはいかん」 管制官「ですが、基地に戻るまで間に合わないかも知れません!」 ヴィヴリオ「そうか……PC1。機体を捨てて、脱出しろ。ちせはこちらから操作して脱出させる」 脱出した場合、PC1はヴィークルなし、ナビゲーターなしの生身で戦闘することになる。 オーギュメント等を使用する場合も、その分の修正値を得られないことに注意。 また、ベートのPC1の記憶を取り戻させるならば、最初で最後のチャンスである。 具体的には『脱出せず、天使化もさせないこと』になる。 ただし、これが正解であるとかトゥルーエンドという訳ではない(ハッピーエンドではあるかも知れないが)ので、押し付けには注意すること。 脱出した場合 ヴィヴリオ「回収部隊を出す。極力その場から離れろ」 ヴィヴリオ「生身で戦う?お前、死にたいのか」 ヴィヴリオ「ならば、絶対に死ぬな。お前の命、誰に救ってもらったのか、よく考えろ」 脱出しない場合 ヴィヴリオ「脱出しない?お前のその選択が、更なる悲劇を生んだとしてもか?」 ベート「……聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。万軍の主よ。天と地はあなたの光栄に、あまねく満ち渡る」 ヴィヴリオ「段階が進んだか。脱出させる時間がない。お前の手で『処理』しろ」 ベートを『処理』しない ヴィヴリオ「ならば実力で証明してみせろ。お前にはその義務がある」 ヴィヴリオ「さもなくば、ちせに再度の死が訪れる。次はない」 〈意志力〉難易度99の判定を行う。 成功した場合 ベート「……PC1、くん?あれ、なんで今まで、忘れて……」 ベート「えっと、天使と戦ってる最中だったよね、今はそっちに集中しなきゃ」 シーン2に進む。 また、【ベート8−16からのダーザイン】を、ナビゲーター専用オーギュメントの代償として使用出来るようになる。 判定しない、または失敗した場合、『処理』した場合の描写に移ること。 ベートを『処理』する 乾いた銃声。 ヴィヴリオ「PC1、帰還しろ」 ヴィヴリオ「弔い合戦がしたいならば、止めはせん。だが、一人に動かすにはそれ相応のリスクがある。それを承知の上で、だな?」 シーン2に進む。 また、シーン2の戦闘において、ナビゲーター修正は得られない上、メジャーアクションを行う度に1D6点アガペーが上昇する。 シーン2 シーンプレイヤーはPC3、全員登場 レミエルとの戦闘となる。 データはエンドレスサマー掲載の『破壊の天使』を使用する。 その他のエネミーの配置等も、それに準ずる。 エンディングフェイズ シーン0 ベートが死亡している場合の合同エンディング シーンプレイヤーはPC1、全員登場 キミ達はちせの墓の前にいる。 キミの独りよがりで、キミはちせをまた死なせたのだ。 奇跡はもう、起こらない。 やり切れない思いだけが、残る。 シーン1 シーンプレイヤーはPC4 部下達との会話 休憩室で、部下と今回の一件について話している。 ベートが生存し、記憶を取り戻している場合 ウェッジ「ちせちゃん、PC1の記憶取り戻せて、良かったっすね」 ビックス「でも危機一髪もいい所だぞ、あれ。聖句詠唱の段階、かなり進んでたからな」 ウェッジ「確かに、聞いたことないとこまで呟いてたな……」 ビックス「まあ、終わり良ければ全て良し、ですけどね。しかし、死んだナビゲーターを完全機械化兵として蘇生させて運用……少し、リスキーに過ぎる気がします」 ウェッジ「そんだけ、上も追い詰められてんだろ。胸糞は悪りーけどな」 ビックス「二度とも、何とか乗り越えることが出来ました。問題は、味を占めた兵器開発局が、また同じことを繰り返さないか、が心配です」 ウェッジ「二度あることは三度ある、って?」 ビックスは頷き「たまたま成功しただけのこと、奇跡を最初から当てにするような計画は、いつか大失敗します。借金をギャンブルで埋めようとして、もっと借金するようなものです」 ウェッジ「マジでドツボにハマる、って奴だな……」 ビックス「話が逸れました。だから我々は、その被害者がこれ以上でないよう、ギアドライバー達を守らねばなりません」 ウェッジ「そうっすよ、子供達が安心して戦えるようにすんのが、俺達の仕事っすもんね。ね、隊長」 ベートが生存し、記憶を取り戻していない場合 ウェッジ「危ないとこっしたね、ベートちゃん。回収間に合って良かったっす」 ビックス「ですが、これでベートさんがPC1の記憶を取り戻すチャンスは失われた、と見るべきでしょうね」 ウェッジ「どういう意味だ、それ?」 ビックス「記憶を取り戻すきっかけ、を無視したし、彼女は呟いていました。『帰ったら、お父さんに相談しよう』って」 ウェッジ「それがどーしたってんさ?」 ビックスは《超推理》を使用して「恐らく、笠居博士に記憶の消去処置を頼んだんじゃないか、と思います」 ウェッジ「じゃあ、PC1のことはもう思い出せない、ってことかよ」 ビックス「そうですね……『ベートさんの記憶』だけで上書きされると思います。二人の関係はもう一度、一からやり直しでしょう」 ウェッジ「そんな話、ありかよ……」 ビックス「技術者としては、完全機械化兵の暴走や天使化の危険性を排除するなら、分からない話でもない。ただ……」 ウェッジ「ただ、なんだよ?」 ビックス「二人を知る者として、人としては、悲しいな」 ウェッジ「確かになー……」 その時、天使の襲来を知らせる緊急警報が鳴り響く。 ビックス「感傷に浸る暇もなし、か。ある意味、今は有難いですね」 シーン2 シーンプレイヤーはPC3 ベート、桂との会話 休憩室。 キミと桂、そしてベートの3人で歓談している。 ベート「でも、わたしって、何者なんだろう。ちせの脳、ちせとしての記憶を持ってるけど、身体は別のものになっちゃったし……」 桂「うーん……わたしも全く同じ境遇だけど、わたしはわたし、わたしは遠山桂だと、わたしは思ってるよ」 桂「そしてPC3が、みんなが、わたしを遠山桂として見てくれる。だから、わたしは遠山桂としていられる」 桂「 人が人として成立するには、己の認識だけでなく、他者からの観測も必要とする。それで初めて、人は自己を確立出来る」 ベート「え、えーと……桂先輩、ちょっと分かりません……」 桂「まあ要するに、ちせがどうしたいか、だよ。ちせでありたいのか、それとも別人、ベートでありたいのか」 ベート「えーと、わたし、は……」 ※ベートはここでは答えを口にしない。 シーン3 シーンプレイヤーはPC2 太郎との会話 太郎の研究室で、今回の顛末を話している。 ベートが生存し、記憶を取り戻している 太郎「PC2君。ちせの失った記憶を取り戻してくれて、ありがとう。私には、出来なかったことだ」 太郎「しかし奇跡、というのは本当にあるのだな。私は感動したよ」 太郎「前にも言った気がするが、私は、分の悪い賭けは嫌いなんだ。奇跡なんて曖昧な定義のもの、この目で見るまで信じていなかったからね」 太郎「あの力を、任意に発現させることが出来ないものか……。そうすれば、天使との戦いに大いに役立つに違いない」 太郎「ああ、すまない。ついつい、思考に没頭してしまった。悪い癖だよ」 太郎「PC2君。ちせの観察を継続してくれないか。PC1君とちせ、二人がどのような選択をするのか、私の代わりに見届けて欲しいんだ」 ベートが生存し、記憶を取り戻していない 太郎「天使化の危機は何とか免れたようで、何よりだ。またこのような事が無いよう、ちせには処置を施した」 太郎「ちせ自身が望んだことだ。あやふやな記憶で、PC1君を振り回したくない、と」 太郎「私は科学者だ。裏付けのないデータは信用しない。ましてや、奇跡に縋るなど、以ての外。……ちせの蘇生だけは、例外だが」 太郎「ただね……予感でしか無いんだが……ちせは、もう一度、PC1君と絆を結び、もう一度思い出を育もうとするだろう。PC1君がそれを望むか、受け入れるかどうかまでは、分からんがね」 太郎「PC2君。ちせの観察を継続してくれないか。PC1君とちせ、二人がどのような選択をするのか、私の代わりに見届けて欲しいんだ」 シーン4 シーンプレイヤーはPC1 ベートとの会話 記憶を取り戻した場合 待機室に行く途中で、キミはベートに声を掛けられた。 ベート「PC1くん、言い忘れてたこと、あるんだ。忘れてて、ごめんね。……ただいま」」 ベート「ねえ、PC1くん、わたしは、どうすればいいかな。ちせとして振る舞えばいい?それとも、別人として、ベートとして振る舞ったほうがいい?」 ベート「他でもないPC1くんに、決めてほしいんだ。わたしだけじゃ、決められないの」 ベート「わたしを定義付けて形作るのは、あなたがいい」 記憶を取り戻していない場合 待機室に行く途中で、キミはベートに声を掛けられた。 ベート「ごめんなさい、PC1くん。天使との戦闘中に、取り乱しちゃって……」 ベート「でも、もう大丈夫だよ。こうならないように、お父さんにお願いしたから」 ちせと同じ顔、同じ声で笑うベート。 ※ここでのお願いとは、天使レミエルと交戦した記憶の、消去処置である。  それは同時に、封印されたPC1の記憶も失われることになる。 ベート「これからも、迷惑かけちゃうと思うけど……よろしくお願いします」 ベートは手を差し出す。 キミはその手を…… プロット PC1のことだけ覚えていないヒロイン 遠山桂。奇跡の前例たる彼女。 その奇跡をもう一度と、実行された計画。 義体は最新型ではなく、安定稼働が見込め、予備部品も豊富な第8世代型にした。 素体からの欠損は『PC1の記憶』。 記憶の転写自体は成功しており、その証拠にPC1以外の者の記憶は全て覚えている。 この欠損は意図されたものではなく、素体となった少女の防衛本能である。 彼女は一度死んでいるが、その記憶は封印されている。 自らの死の記憶は、PC1の記憶と紐付けられている為、PC1を思い出すことは、自らの死の瞬間の記憶を思い出すことに等しい。 死の瞬間の記憶を再び経験すれば、彼女の精神は崩壊するだろう。 その為、彼女はPC1を『忘れた』。 彼女は死んだことを覚えておらず、父親から『車に撥ねられて大怪我をし、身体を完全義体に置き換えられた』と言われたことを真実だと思っている。 名前についての余談 カーサはイタリア語で家、住居の居、ちせはアイヌ語で家。 父親の名前は太郎。タロがフィンランド語で家。 ベートはヘブライ文字のベート(起源は家)、8ー16はドイツ語で家のハイムの語呂合わせ。 完全機械化兵としてのコードネームは与えられたが、本人はちせとして振る舞う。 父親に、ちせは車に撥ねられて大怪我を負った為に、完全義体に入れ換えざるを得なかったと言われ、ショックは受けたが、受け入れた。 Da sein,Du bist dort Aber,Ich bin nicht in dir... ダーザイン、ドゥービストドルト アーバァ、イッヒビーンニヒトインディーア そこにいる、キミはそこにいる けれど、キミの中にボクはいない……