今回予告 PC1を先輩と呼んで懐いているリュンマが、実戦に投入されることになった。 だが出撃し天使化を目撃した彼女は、トラウマを思い出して戦場で立ち竦む。 かつて、父の亡骸を見た後に、迷子になった日。 そこで彼女が見たモノは。 忘れ去った、奥に押し込めた記憶の中に浮かぶのは……逞しい父の優しい顔と自分を優しく見つめる瞳、それと……。 戦わなければ、生き残れない。 でも、戦う事すら出来なかったら、どうすればいい? 助けを求める手が、そこにある。 キミは、その手を……どうする? エンゼルギア天使大戦TRPG 『Call for (you).』 誰もがみんな、誰かを必要としてる。 本シナリオは、これ単体では拙作『SAVE YOUR SOUL』の別バージョンですが、J.S.S-R114『Hopeless call』と連続で遊ぶ為に調整されたシナリオになっています。 作中の時期は7月末〜8月頭、帝都奪還作戦の直前のタイミングとなります 『Hopeless call』との間にアバドン戦を挟む場合は、J.S.S-R8-5『MONSTER’S ROAR ver.5』を遊びましょう。 ※「call for」:「〜を求める」「〜を必要とする」 ハンドアウト PC1:ギアドライバー/ナビ:凍 リュンマの先輩である。 というか、リュンマに先輩と呼ばれて懐かれている。 新型機のドライバーに選ばれて、ようやく実戦デビュー出来る、とリュンマが嬉しそうに報告してきた。 なら先輩として、カッコいいところを見せなければ。 シナリオダーザイン【リュンマ・サカモトからの憧れ】 PC2:ソルジャー キミは、天使大戦開戦当初からシュネルギア部隊の護衛を務めてきた、歴戦の機械化兵である。 またキミはかつてメーヴェに所属し、リュンマ・サカモト少尉の父親であるトウマ・サカモトとは旧知の仲だった。 当時最高峰のアペルギアドライバーの一人だったトウマは、呪法船団を守る為、敵天使と交戦して死亡した……と言うのが、公式の記録である。  だが実際には……彼は天使化し、キミの手によって“処理”された。  軍において、天使化による味方からの“処理”は最も不名誉な死とされる為、彼の死も例外なく隠匿。  勿論それは、天使核兵器の持つリスクを、兵士達に隠す為でもある。  同時に、キミが彼を“処理”した事実もまた、隠匿された。 そしてトウマ亡き後、キミはリュンマの成長を見守ってきた。 それがトウマの遺した遺言、約束だからだ。 シナリオダーザイン【トウマ・サカモトからの遺志】 PC3:オフィーツィア キミはシュネルギア部隊直属の指揮官である。 シュネルギア部隊の隊長はアクシアだが、別任務で不在の事が多い為、キミが実質的なシュネルギア部隊の隊長であり……常日頃ヴィヴリオからの無理難題をどうにかこなす日々を送っている。 信頼されているのは分かるが、もう少し手心を、と思わないこともない。 さて、今日の無茶振りは何だろうか。 最近それに慣れてきている自分が、ちょっと恐い。 それはともあれ、今回リュンマ・サカモトを実戦投入するという。 彼女は訓練は積んでいるが実戦は初めての為、何か問題が発生した場合に対応せよとのこと。 リュンマがPC2と懇意であると言われたので、いざという時は頼ろうそうしよう。 シナリオダーザイン【ヴィヴリオからの信頼】 PC4:ギアドライバー/ナビ:伊音 キミはヴィヴリオから、伊音と共に、リュンマに戦士としての心構えを教えてやれ、と命令される。 伊音は、言葉にするのは苦手だからキミに手伝ってほしいと頼んで来た。 まあ分からないでもない。 キミも伊音も剣に生きる者、言の葉よりも己の技量で語る方が、性に合っているのは確か。 それはそれとして……行く行くは草薙家の当主となる者が、それでいいのか? シナリオダーザイン【草薙伊音からの信頼】 まえがき 本シナリオは、拙作J.S.S-R18『SAVE YOUR SOUL』の別バージョンです。 『Hopeless call』の前日譚として遊べるように『SAVE YOUR SOUL』を調整しようと思ったら、ほぼ書き直すしかなかったので、新作と位置付けました。 オープニングフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1 リュンマがキミの元に、喜び勇んで駆け寄って来た。 リュンマ「PC1先輩、聞いて下さい!自分、今度の実戦に出撃出来るそうです!」 リュンマ「実験機の運用試験も兼ねて、だそうですが……この日を、どんなに待ち侘びたか」 リュンマ「これでようやく、先輩と一緒に戦えます!ご指南、よろしくお願いしますっ!」 凍は無表情に「……そう。……ナビゲーターは?」 リュンマ「パルマコンさんです!」 凍「……そう」 リュンマ「パルマコンさんの足を引っ張らないよう、頑張ります!」 凍「……ん」 シナリオダーザイン【リュンマ・サカモトからの憧れ】 シーン2 シーンプレイヤーはPC3 キミはヴィヴリオの執務室に呼び出されている。 ヴィヴリオ「リュンマ・サカモト少尉を、次回より実戦投入する」 ヴィヴリオ「ナビゲーターは一時的にパルマコンが務めるが、今後の運用については未定だ。今回の運用結果によって、何らかの配置変更も考えられる」」 ヴィヴリオ「戦力になる者は、一人でも多い方がいい。だが、訓練で好成績を修めていても、いざ実戦となると、何らかの問題が生じる可能性が高い」 ヴィヴリオ「そこでお前に、サカモトの実戦投入における監督と補助、並びに問題発生時の対応を任せたい」 ヴィヴリオ「……新兵は、何かと問題を起こすものだからな」 ヴィヴリオ「また、サカモトはPC2と懇意だ。何かあれば、PC2にも協力を要請するように」 シナリオダーザイン【ヴィヴリオからの信頼】 シーン3 シーンプレイヤーはPC4 キミは伊音と共に、司令室に呼び出されている。 ヴィヴリオ「今回、サカモトを実戦投入する運びとなった」 ヴィヴリオ「そこでPC4。草薙と共に、サカモトに戦士としての心構えを教えてやってくれ」 伊音「うむ、その命令、確かに承った」 司令室を後にし、伊音がキミに話し掛ける。 伊音「……とは言ったものの……言葉で伝えるのは不得手でな。刀と刀、拳と拳を交えて分かり合う方が、私は性に合っている」 伊音「そこでだ。お前には通訳をして欲しい。私が刀を通じて言わんとすることを、言葉にしてサカモトに伝えてほしいんだ」 伊音「……私がそういう点において不器用なのは、お前も重々承知しているだろう?」 シナリオダーザイン【草薙伊音からの信頼】 シーン4 シーンプレイヤーはPC2 〜回想シーン〜 呪法船団の滑走路上で、沈む夕日をトウマ・サカモトと眺めている。 トウマはヤシマ、統一帝国合わせても、最優のアペルギアドライバーの一人だ。 トウマ「なあ、PC2。この戦争が終わったら……俺は、退役するつもりだ」 トウマ「俺がいつも家を留守にしているせいで、妻にも子供達にも、寂しい思いばかりさせてしまった。その穴埋めがしたいんだ」 だが、トウマの願いは、叶うことはなかった。 トウマ『聖なるかな……頼む、PC2……俺を、殺してくれ!俺が、俺でなくなる前に!聖なるかな……』 トウマ『……かぞ、くを……たの、む……』 トウマはそう言い残し、完全に天使化する。 マスケンヴァル現象が発生する前に、キミは彼を“処理”した。 〜回想終わり〜 それ以降、キミはサカモト家を、特に父に憧れていたリュンマを、何かと気に掛けていた。 リュンマが父の跡を継いで、軍人になりたいと言い出した時も。 リュンマがヘルプストハイムチェックで、ギアドライバーとしての素質を見い出された時も。 キミがシュネルギア部隊の直衛として選ばれた時も。 ……そして今回、リュンマが実戦に投入されると、本人から聞いた時も。 なら、リュンマがトウマの二の舞を踏まないよう、自分は細心の注意を払わなければならない。 それが、トウマの遺言なのだから。 シナリオダーザイン【トウマ・サカモトからの遺志】 ミドルフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 リュンマが新型機のギアドライバーとして任命される キミ達は司令室に集められた。 予想通り、リュンマも一緒にいる。 ヴィヴリオ「さて、既に知っている者もいるだろうが、サカモト少尉には次の戦闘から出撃してもらうことになった」 ヴィヴリオ「搭乗機体はトラバントだが、ケルン出力を調整し自動反撃能力を向上させたトラバントジステム試作型弐式、長距離射程を狙撃可能としたトラバントジステム試作型参式、この二つを搭載した強化型となっている」 リュンマ「試作兵器に強化型機体!くーっ、燃える展開です!」 セラピア「リュンマちゃん、まだ大佐が説明中なんだよ リュンマ「あ、はい、ごめんなさい……」 ヴィヴリオ「浮かれる気持ちは分からんでもない。今回は不問とする。さて、サカモト少尉はケルン出力に優れている。だが制御には難点がある為、今回は補助としてパルマコン少尉をナビゲーターに据える」 リュンマ「はいっ!よろしくお願いします、パルマコンさん!」 セラピア「うぃうぃ、了解なんだよ〜。こちらこそよろしくね、リュンマちゃん♪」 会話が一段落したら セラピアが顔を上げ「……みんな、来るよ」 管制官「緊急警報!天使の一団がヤシマ本土目掛け、接近中です!」 ヴィヴリオ「なるほど、天使の襲撃を察知したか。……さて、おあつらえ向きに天使が現れた。サカモト少尉、出撃だ」 リュンマ「はいっ!」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン2 シーンプレイヤーはPC4、全員登場 リュンマの初戦、友軍の天使化を目の当たりにして怖気づく リュンマ「トラバントジステム弐式、参式、行けーっ!」 リュンマとセラピアの駆るトラバントが、トラバントジステムを縦横無尽に操る。 セラピア「……今のところは、順調みたいだね」 だが。 主天使の放った聖光を浴びた友軍の完全機械化兵が、天使化を開始し、純白の羽毛に包まれる。 即座に他の完全機械化兵が、天使化し始めた個体を“処理”する。 それを見たリュンマは「あ、あぁ、あああ……」 操縦桿から手を離し、ガタガタ震えだす。 セラピア「どうしたの、リュンマちゃん!?……ダメだ、返事しない。PC3ちゃん、操縦権をボクに変更するよ!メヒテ・ディ・コントローレ!」 セラピアが操縦権移動の強制コマンドを打ち込むと、ナビゲーター席とギアドライバー席が即座に入れ替わる。 セラピア「全機に報告!サカモト少尉、戦意喪失で行動不能、ボクは撤退するんだよ!」 伊音「……了解だ。あとは我らに任せろ」 伊音「征くぞ、PC4」 会話を終えたら下記の描写を読み上げ、シーンを終了する。 敵を退けたキミ達。 だが、リュンマは一体、どうしたのだろうか……。 ここのエモーションで、PC1のシナリオダーザイン【リュンマ・サカモトからの憧れ】を【不安】に変更する。GMからの指定なので、パトスチットの消費は不要。 シーン3 シーンプレイヤーはPC3、他のPCの登場は任意 リュンマが羽村に診断を受ける 医務室に運び込まれたリュンマが、羽村の診察を受けている。 指揮官であるキミはその付き添いだ。 羽村「外傷はなし、体内エーテル濃度は若干高いけど正常値の範囲内だから、身体の方はそこまで心配しなくて良さそうだね」 リュンマ「良かった、です……」 羽村「……あとはメンタルの方だけど……もしかしたら、天使化そのものに、トラウマがあるのかも知れないね。何が原因かについて、今断言することは出来ないけど」 羽村「こちらでも色々調べておくよ。何か分かったら、連絡するからさ」 リュンマ「はい、よろしくお願いします……」 セラピア「リュンマちゃん、気を落とさないでね。誰だって、最初からは上手く行かないものなんだよ」 セラピア「でもPC1ちゃんは例外だよ?怪我した凍ちゃんを守る為に、マニュアルも読まないでいきなりシュネルギア動かした、例外中の例外だからね?」 セラピア「こんな時には、気分転換が一番なんだよ。これから瑞穂亭でも行って、甘いもの食べよう?」 会話を終えたら下記の描写を読み上げ、シーンを終了する。 尚描写は長めである。ご了承ください。 セラピア「あ、ごめん電話だ。みんな、先に行ってて欲しいんだよ」 ヴィヴリオ『私だ。セラピア、何か分かったか?』 セラピア「うん、何となくは。……多分リュンマちゃん、過去に天使化、あるいは天使化したものを目撃してるんだよ」 ヴィヴリオ『……有り得るとしたら、それは彼女の父親だ。詳しくは暗号化したメールを、お前のアドレスに送る』 セラピア「うぃ、了解なんだよ〜。ところでヴィヴリオちゃん、お願いがあるんだけど、いいかな?かな?」 ヴィヴリオ『……前がその言い方する時は、大体費用の相談だ。で?何処に行くんだ?』 セラピア「さっすがヴィヴリオちゃん、話が早いんだよ。瑞穂亭行くから、おやつ代欲しいなー、って」 ヴィヴリオ『それなら行って来い。ただし、領収書は必ず貰って来てくれ。あと』 セラピア「お土産、だね?どら焼きとあんみつ、どっちがいい?」 ヴィヴリオ『……両方だ』 セラピア「ふふ、了解なんだよ。じゃ、お土産待っててね〜」 電話が切れる。 セラピア「あ、もうこんな時間だ。急がなきゃ」 シーン4 シーンプレイヤーはPC2、全員登場 情報収集 キミ達はセラピアに呼ばれて、普段使用されていない部屋に集まっている。 セラピア「みんな集まったね?さて、今回の件について、なんだけど……PC2ちゃんから、話す?」 《事情通》難易度5 リュンマの父トウマは、公には敵天使との交戦で死亡した、と記録上ではなっている。 だが実際には、天使化し、PC2の手によって“処理”されている。 軍において、天使化による味方からの“処理”は最も不名誉な死とされる為、彼の死は隠匿された。 同時に、PC2がトウマを“処理”したことも、隠匿された。 また、天使化した者を“処理”した場合、通常なら羽や塩になって消える。 だがトウマの肉体は消失しなかった為、研究材料としてその体の一部を“生きたまま”軍に回収され、今でもその一部は八坂機関に保管されている。 そしてリュンマは、父の遺体、いや、“父だったもの”を偶然見てしまっていた。 トウマの死を知ったとき、いや『表向きの』死体を見た際、彼女は軍病院で迷子になった。 そして彼女が、ある部屋で見てしまったモノ。 天使化した父トウマの、成れの果て。 死して後も蠢く、虚無のように白い肉塊と、襞の間から見えた、それだけはよく知った色の……父の瞳。 その後、彼女は部屋の前で気を失っていたのを回収され、見たものを覚えていない事を確認されて、解放されている。 以上は、PC2の口から語られた、とする。 セラピア「リュンマちゃんが今まで、ずっと心の奥に閉じ込めていた記憶」 セラピア「それが、先の戦闘での天使化の目撃により呼び起こされ、結果として行動不能に陥った……っていうのが、今回起きたこと、なんだよ」 リュンマ「お父さん、が……。それ、じゃ……PC2さんは、全部、知ってて……」 リュンマ「……PC2さん。父がまだ、人である内に、人として死なせてくれて……ありがとう、ございました。家族を、代表して……お礼、申し上げます」 リュンマ「……自分は、諦めなきゃ、いけないのかな……でも、怖い……」 ここでは、リュンマを勇気付けようとしても、空返事が返ってくるだけである。 彼女を真に立ち直らせることが出来るのは、ミドルフェイズ最後のシーン、PC1との会話となる。 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン5 シーンプレイヤーはPC2、全員登場 天使化及びマスケンヴァル現象について、セラピアが語るシーン。 ショートバージョンとロングバージョンを用意した。 エンゼルギアの世界観にもっと浸りたい場合、あるいはセラピアの語りを聞きたい場合は、ロングバージョンを選択すると良い。 ●ショートバージョン 休憩室でリュンマを取り囲み、彼女を慰めている。 リュンマ「折角、先輩と肩を並べて戦えるチャンスが来たのに、諦めなきゃいけない、なんて……」 リュンマ「……悔しいし、自分が不甲斐ないです。だけど、怖いんです……。いつか、自分もああなってしまうかも、って」 セラピア「……天使化、かあ」 リュンマ「……パルマコンさん?」 セラピア「天使化について、ボクの思うところは沢山ある。けど、ここは呑み込んでおくね」 セラピア「……ボクらは、天使と戦う為に、同じ天使の力を使っている。だから、天使化の危険は常について回る。こればっかりは、どうしても避けられない事実なんだよ」 セラピア「だけどね。まずシュネルギアは二人乗り。理由はいくつもあるけど、一人じゃ抱えきれないものを、二人で分け合う為でもあるんだよ」 セラピア「リュンマちゃん。キミは一人じゃない。まあ今回は、になっちゃうけど、シュネルギアにはボクも乗ってる。そして部隊のみんな、基地のみんな、家族や友達。キミの周りにはキミを気に掛けてくれる人が沢山いるんだよ?」 セラピア「……人は、一人では生きられない。周りの人達との絆によって、生かされている。それこそがダーザイン、存在証明」 セラピア「だから、辛い時、苦しい時は、誰かに頼っていいんだよ。頼る相手はボクでもいいし、PC1ちゃんやPC2ちゃんでも、誰でもいい。一人で悩まず、誰かに弱音を吐いていいんだよ。迷惑になる、とか思わないで」 リュンマ「……本当に、いいんでしょうか?」 伊音「サカモト。お前がまだ、戦士たらんとするならば、いくらでも力になってやる。なあPC4、お前もそうだろう?」 リュンマ「……ありがとう、ございます。パルマコンさん、皆さん。どんな時でも皆さんがいてくれる、って思ったら、少し怖いのが、薄れました」 会話が一段落したら、下記の描写を読み上げる。 管制官「緊急警報!太平洋上の合衆国天使十字軍第七艦隊より、天使の軍勢がヤシマ本土目掛け接近中です!」 伊音「そら、おいでなすったようだ。……サカモトよ。立ち上がるなら今しかない。酷なことを言うようだが、ここで立ち止まったら、お前は前に二度と進めない」 リュンマ「自分、は……」 リュンマは両の頬を自分でパァンと叩き「やります。後悔は、したくありません」 伊音「その意気や、良し!」 会話を終えたらシーンを終了する。 ●ロングバージョン このシーンはセラピアの語りが非常に長いことを、予めPLに伝えておくこと。 まあこっちを選んだ時点で、覚悟してない奴いる?いねぇよなあ! 休憩室でリュンマを取り囲み、彼女を慰めている。 リュンマ「折角、先輩と肩を並べて戦えるチャンスが来たのに、諦めなきゃいけない、なんて……」 リュンマ「……悔しいし、自分が不甲斐ないです。だけど、怖いんです……。いつか、自分もああなってしまうかも、って」 セラピア「……天使化、かあ」 リュンマ「……パルマコンさん?」 セラピア「ちょっと長くなるけど、ごめんね。ホントに長いよ?でもこれは、避けては通れない話なんだよ。みんなにとっても、ボクにとっても、ね」 セラピア「天使化、エンジェライズ。人や物が高濃度エーテルに汚染されて、天使へと変貌すること。そして天使化に伴う、マスケンヴァル現象の発生。エーテルの奔流が物質を相転移させ、消失させる」 セラピア「“およそ汝が地にて繋ぐところは天にても繋ぎ、地にてほどくところは天にてもほどくなり”」 セラピア「発生したら、周囲数キロメートル内の物質は、根こそぎ消滅する。ただ一つの例外もなく、ね。シュネルギアに乗っていても防げない」 セラピア「だから、天使化したら、マスケンヴァル現象が起きる前に……殺さなきゃならない。みんな、死んじゃうから」 セラピア「……多くの人を助ける為に、一人を殺す。どちらかが正しいかなんて、考えるまでもない」 セラピア「だけど……だけどね。その引き金を引いた感触と、記憶は……ずっと、残るんだ」 セラピア「今でも、夢に見る。桂ちゃんを“処理”したときの、銃の重さを。引き鉄の感触を。……桂ちゃんの、最期の言葉を。……PC2ちゃんも、そうでしょ?」 セラピア「さて、ついでにマスケンヴァル現象とは何か、を説明するね。……1939年、統一帝国北部辺境の地ノルトラントにあった、天使について研究していた第37特務研究所、通称アンゲルスハイムで起こった、原因不明の爆発事件」 セラピア「その爆発によって、アンゲルスハイムは消滅した。詳細は不明だけど、研究していた天使核兵器による事件の暴走だったとも、天界の門(ヘブンズゲイト)が開いたとも言われてる」 セラピア「その実験に関与したという士官の名前は……ラルフ・マスケンヴァル。その姓を取って、事件もマスケンヴァル事件、そこで発生した物質の消失現象もマスケンヴァル現象と呼ばれている」 セラピア「そして、合衆国現法王の名前は……ラルフ・マスケンヴァル。そう、マスケンヴァル事件を引き起こしたのと、同一人物で……ボク達の、敵」 セラピア「……何で知ってるのか、って?ママちゃんから、聞いてるから。ママちゃんは、アンゲルスハイムの関係者でもあったからね」 セラピア「……ボクは、全部は知らないよ。知ってる事だけ。でも、言わないでいることも、いっぱいあるよ。言わなくていい事、言っちゃいけない事もあるから、さ」 セラピア「それに言うでしょ?魅力的なオンナは、謎が多いって」 セラピア「大分脱線しちゃったけど。……ボクらは、天使と戦う為に、同じ天使の力を使っている。だから、天使化の危険は常について回る。こればっかりは、どうしても避けられない事実なんだよ」 セラピア「だけどね。まずシュネルギアは二人乗り。理由はいくつもあるけど、一人じゃ抱えきれないものを、二人で分け合う為でもあるんだよ」 セラピア「リュンマちゃん。キミは一人じゃない。まあ今回は、になっちゃうけど、シュネルギアにはボクも乗ってる。そして部隊のみんな、基地のみんな、家族や友達。キミの周りにはキミを気に掛けてくれる人が沢山いるんだよ?」 セラピア「……人は、一人では生きられない。周りの人達との絆によって、生かされている。それこそがダーザイン、存在証明」 セラピア「だから、辛い時、苦しい時は、誰かに頼っていいんだよ。頼る相手はボクでもいいし、PC1ちゃんやPC2ちゃんでも、誰でもいい。一人で悩まず、誰かに弱音を吐いていいんだよ。迷惑になる、とか思わないで」 リュンマ「……本当に、いいんでしょうか?」 伊音「サカモト。お前がまだ、戦士たらんとするならば、いくらでも力になってやる。なあPC4、おまえもそうだろう?」 リュンマ「……ありがとう、ございます。パルマコンさん、皆さん。どんな時でも皆さんがいてくれる、って思ったら、少し怖いのが、薄れました」 会話が一段落したら、下記の描写を読み上げる。 管制官「緊急警報!太平洋上の合衆国天使十字軍第七艦隊より、天使の軍勢がヤシマ本土目掛け接近中です!」 伊音「そら、おいでなすったようだ。……サカモトよ。立ち上がるなら今しかない。酷なことを言うようだが、ここで立ち止まったら、お前は前に二度と進めない」 リュンマ「自分、は……」 リュンマは両の頬を自分でパァンと叩き「やります。後悔は、したくありません」 伊音「その意気や、良し!」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン6 マスターシーン、天使出現 第七艦隊から飛び立った天使は、高速でヤシマ本土を目指し飛んでいる。 隊長「対天使ミサイル、撃てーっ!」 迎撃に出た航空部隊が、天使目掛け一斉にミサイルを発射する。 だがミサイルは着弾寸前に目標を見失い、天使がいる筈の場所で誘爆する。 隊員1「天使反応消失!ですが着弾した様子はありません!」 隊員2「!?天使反応出現!目標は500mを飛行中、無傷です!」 隊長「超高速移動……いや、瞬間転移か!……これでは我々の手には負えん、シュネルギア部隊の協力を仰ぐ!」 航空部隊から瑞穂基地に、エーテル通信で連絡が飛ぶ。 ヴィヴリオ「……状況は把握した。シュネルギア部隊を出撃させる」 ヴィヴリオ「プシナプシナ、シュネルギア部隊の招集命令を出せ」 プシナプシナ「了解ですー。緊急指令ですー、シュネルギア部隊は至急司令室に集合して下さーい」 プシナプシナ「それと大佐、合衆国軍の通信を傍受したところ、天使の識別名はイロウルと判明しましたー」 ヴィヴリオ「恐怖を司る天使、か……全く毎度のことながら、よく皮肉が効いたものだ。召喚している従軍司祭の顔が見てみたい」 描写を読み上げ終えたらシーンを終了する。 シーン7 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 出撃前のブリーフィング。 キミ達は司令室に集合している。 ヴィヴリオ「瞬間転移を繰り返して移動す天使を補足し続けるのは、容易ではない。そこで奴を、トラバントジステム試作型弐式・参式で形成したケルンのネットで捕らえ、動きを拘束する」 ヴィヴリオ「その任を担うのはサカモト少尉、貴官だ。貴官のケルン出力に、パルマコン少尉のケルン操作能力が加われば、可能だ」 リュンマ「は、はいっ!」 ヴィヴリオ「……他に手段がない。やってくれるな?」 リュンマ「ぜ、全力を尽くします!」 ヴィヴリオ「よろしい。ではPC3、戦闘空域での指揮をいつも通り頼む」 ヴィヴリオ「PC2、貴官にシュネルギア部隊の護衛を命じる。お前の守りが、この作戦の成否を左右する」 ヴィヴリオ「PC1(階級)及び八坂特務少尉、PC4(階級)及び草薙中尉。サカモト・パルマコン機が敵を抑えている内に、速やかに天使を撃破しろ」 ここでのやり取りが終わったら、PC1以外はシーンから退場する。 格納庫へと向かう途中、リュンマがPC1を呼び止める。 リュンマ「先輩。ほんのちょっとだけ、いいですか?」 リュンマ「今頑張らなきゃ、自分はここにいる資格はない。でも……まだ少しだけ、怖いと思う気持ちがあるんです」 リュンマ「その……先輩に励ましてもらえたら、もっと頑張れると、思うんです……」 リュンマ「お願いです、PC1先輩。自分に、勇気を下さい」 リュンマへ勇気を与えるには、具体的にはPC1のシナリオダーザイン【リュンマ・サカモトからの不安】を、ここで何らかのポジティブな感情に書き換えることである。 リュンマ「……ありがとう、ございます。これで、自分は頑張れます」 会話を終えたらシーンを終了する。 ここのエモーションで、PC1のシナリオダーザイン以外、の全てのダーザインがオープンアップする。 PC1のシナリオダーザインが何らかのポジティブな感情で書き換えられた場合にのみ、リュンマのダーザインはオープンアップする。 またその場合、専用オーギュメント《ファヌエル》を使用可能となる。 クライマックスフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 戦闘空域に到達する直前。 セラピア「リュンマちゃん、スッキリした顔してるね。何かいいことあった?」 そう言いつつ、セラピアは何か嫌な予感がして、通信機のスイッチを切る。 リュンマ「先輩に、勇気を貰いました」 セラピア「そっか、良かったね(何ですって?あっぶない、スイッチ切っといて良かった〜)」 縦横無尽に動く二基のトラバントジステムが、徐々に天使の動きを狭め、ケルンのネットに天使を捕らえる。 リュンマ「天使の動きを自分達が拘束してる内に、皆さん、お願いします!」 天使をネットに捕らえておけるのは、2ラウンド終了時までとなる。 エネミーデータはボステンプレートの光の天使を使用するが、以下の災厄を追加する(同時に経験点も追加される) 災厄《至高天の誘い》×4 PCがエンゲージした次のイニシアチブで使用し、自身を一番近いPCから1000m離れたエンゲージに移動させる。 この災厄は3ラウンド目以降に使用可能となり、1ラウンドに2回まで使用出来る。 尚、3ラウンド目以降に《至高天の誘い》が使用解禁される(ネットが耐えられなくなる為)。 テンプレートにどのデータを使用したかについては、《アナライズ》以外では伝えなくて良いが、《至高天の誘い》の追加と使用条件については、戦闘前にPLに伝えてしまって良い。 エンディングフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC4 キミは伊音から、折り入って話があると言われ、伊音の部屋に招かれている。 伊音「……ここなら、他に聞かれる心配はない」 伊音「PC4。まだ、内密に頼むが……帝都の奪還作戦が、近日中に発表されるそうだ」 伊音「そして帝都奪還の後、八門結界の再構築が執り行われる。その大任を担うのは……私の妹、草薙紫音だ」 伊音「紫音がお役目を果たす為に、帝都奪還作戦は必ず成功させねばならない。……だから、お前も手伝ってくれないか。……頼む」 土下座する伊音。 伊音「……済まない。恩に着る」 シーン2 シーンプレイヤーはPC3 キミはヴィヴリオの執務室に呼ばれ、話している。 ヴィヴリオ「PC1とサカモトは、お互い切磋琢磨し合う、良き関係となるだろう。……それだけで済めば良いが」 ヴィヴリオ「……お前は、年頃の男女の間に友情が成立すると思うか?」 ヴィヴリオ「……気になることがあったら、逐次報告してくれ。子供達の恋愛に我々が気を揉むのも、おかしな話ではあるが……」 ヴィヴリオ「シュネルギアの持つ特性を考えると、かなり重要な問題なのだ。では、頼んだぞ」 シーン3 シーンプレイヤーはPC2 今回の一件で、リュンマが話したい事がある、と言ってきた。 リュンマ「今回も色々と手伝ってもらって、ありがとうございました」 リュンマ「お父さんのことを思うと、辛いけど……でも!頑張ります、だから……応援、して下さい!」 リュンマ「PC2さん。……これからも色々、相談に乗って下さい」 リュンマ「……そ、その、恋愛相談とかも……」 シーン4 シーンプレイヤーはPC1 シミュレーター室。 リュンマがキミを見つけ、話しかける。 リュンマ「PC1先輩、今日も一緒に訓練、よろしくお願いします!」 凍はその様子を、無表情で見つめている。 声を掛けられた凍は、興味無さそうに「……別に。……シミュレーター、先に乗る」 その様子を見ていたセラピアは一人呟く。 セラピア「……いや、これは……波乱の予感が、するんだよ。……こんな時、桂ちゃんがいてくれればな……」 シーン5 マスターシーン リュンマの部屋。 リュンマは机に向かって操作マニュアルを読んでいる。 が、全く集中出来ていない。 この前の出撃でPC1が言っていたことを反芻し、悶々としていて、頁がちっとも進んでいない。 リュンマ「先輩……」 リュンマ「先輩、八坂さんのこと……どう、思ってるんだろ……」 リュンマ「いけないいけない、集中しなきゃ。えーと、ケルン出力の制御方法は……」 リュンマはまた、机の上に飾られた、部隊のみんなで撮った写真に目を落とす。 リュンマ「……先輩。好きです……。あ、言っちゃった……」 顔を赤面させるリュンマ。 一度言葉にしてしまえば。 感情は、確定する。 ……もう、戻れない。 シーン6 マスターシーン 凍の部屋。 殺風景な部屋の中で、部隊のみんなで撮った写真を眺める凍。 凍「……さっき、PC1とリュンマが話してるのを見て……胸が、苦しくなった」 凍「……あの痛み……何?」 ゴホッ。凍が咳き込み、口を手で塞ぐ。 口から話した掌の中にあったのは……白い、羽。 凍「……あと、どのくらい……ここに、いられる?」 長い独り言。 このシナリオ、『SAVE YOUR SOUL』と同じヒロイン、同じシチュエーションのシナリオを書くか、最初迷いました。 結局は同じシナリオにならないか?と思って。 先に『Hopeless call』を書いたんですが、『これ、先にリュンマの恋心について掘り下げておかないと、葛藤も苦悩もあったもんじゃないな?承前となるシナリオ(SAVE YOUR SOUL)は……面子的に手直しってレベルじゃないぞ?どうする?書くか?書かないか?』って思ったんですね。 最終的に『書くか書かないかじゃねえ、やるかやらないかよ!』って開き直って、これを書いた訳だけど。 まあ実際、凍はトゥアレタのように行動しないし、伊音もセラピアの代わりにはなれない。 それに天使化を扱う以上、天使化への桂のスタンスと、セラピアのスタンスは絶対同じにならない。 その三点を考えて、これは違うシナリオと言えるだろう、と開き直ることにしました。 ストーリーラインはどうしても同じっぽくなっちゃったけど、こればかりはどうしようもなかった。 それと、連続で遊べるよう、ちゃんと調整したのを用意したかったし(その為にアバドン戦も加筆した)、リュンマの話もいきなりじゃなくて、ちゃんと前提を踏まえたかった。 そうしないと感情移入出来ないからね。 シナリオタイトルも、『Hopeless call』の前日譚なので、callが入る英語を探しました。 最初、追憶を英語で、と思ったんだけど、recallだったので断念。 他の人が書いたシナリオ名と被るのはちょっと気が引けて。 勿論同じものではないんだけどさ、何かね。 それにね。ちゃんと次の話である『Hopeless call』に合わせたものを、似てるのは覚悟の上でどうしても書きたかった。 そうでないと、次の話の盛り上がり、説得力に欠けるから。 言わばこっちは、『Hopeless call』というメインディッシュを、もっと楽しむ為の前菜。 それに、書ける時に、書きたい時に書かなくちゃ。 またいつスランプで何も書けなくなるか、自分でも分からないからね。 だから書くんだよ。