今回予告 合衆国との戦いに勝利した後。 キミ達には、一つの後悔が残っていた。 それは、草薙伊音の妹、紫音が人柱として八門結界の人柱となったことだ。 そして月日は流れ、ドライクロイツと八坂機関、草薙家、八咫衆の合同での研究により、紫音を救い出す目処が遂に立つ。 キミ達は、アバドンの残した呪いにより、異界と化した祠へと侵入する。 紫音を、取り戻す為に。 十年越しの後悔を、晴らす為に。 エンゼルギア天使大戦TRPG エンドレスサマー 10 years after 『追憶のAster』 キミに会いたかった、もう一度。 PC1:任意(紫音と恋仲、あるいは婚約者だった) キミはかつて、それが叶わぬ夢だと知りつつも、草薙紫音と将来を誓い合った仲だった。 彼女は御国の為、八門結界の人柱としてその身を捧げた。 あれから十年。ようやく紫音を人柱の任から解放する算段がついたと、ヴィヴリオから連絡が来る。 待っていてくれ、紫音。 やっとキミを、そこから救い出すことが出来る。 シナリオダーザイン【草薙紫音からの思慕】 ※PCの性別は男性限定、また完全機械化兵以外とする。 PC2:ギアドライバー/ナビ:紀央 キミと紀央は、草薙紫音の数少ない友人の一人だった。 彼女は御国の為、八門結界の人柱としてその身を捧げた。 友人として、彼女にもっと出来ることは無かったのだろうか、と今でも思う事がある。 だが、挽回のチャンスが来たのだ。 紀央と共に、彼女を救い出す手助けをしなければ。 シナリオダーザイン【司鏡紀央からの懇願】 ※キミは紀央を妻としていても良い。 その場合、紀央の名字はキミと同じものとなる。 PC3:ギアドライバー/ナビ:凍(救世主) キミはラルフを討ち倒し、世界を救った救世主。 だが、全てを救えた訳ではなく、数々の苦難や犠牲もあった。 その内の一つが……草薙紫音が人柱になるのを避けられなかったこと。 あの時、自分の秘めた力に気付けていたら、もしかしたら回避出来たのではないか? だが、挽回のチャンスが来た。 キミの救世主の力を以て、今度こそ彼女を救うのだ。 シナリオダーザイン【◯◯凍からの信頼】 ※PCは男性限定。凍は君の奥さんである。 その為、凍の名字はキミと同じものとなる。 また、オーギュメントは自動的に《エヴァU》となる。 PC4:ギアドライバー/ナビ:伊音 キミのパートナーであった草薙伊音の妹、草薙紫音。 彼女は御国の為、八門結界の人柱としてその身を捧げた。 紫音を失った伊音を支え続けて、十年の時が過ぎた。 今でも伊音は、紫音を人柱にしたことを後悔している。 だが、ようやく紫音を人柱の任から解放出来る算段がついたそうだ。 十年越しの、伊音の後悔を晴らせる時が来た。 シナリオダーザイン【草薙伊音からの後悔】 ※キミは伊音を妻としていても良い。その場合、PCの性別は男性限定となり、キミの名字は草薙となる。 また、草薙家の現当主は伊音である。 本シナリオは4人用です。 PC番号は便宜上のものであり、全員がPC1相当です。 また、時期は十年後を想定しています。 エンドレスサマーの絵コンテで、伊音の十年後の姿があるからね。 また、本シナリオはシーン中のアガペー上昇が非常に高い為、初期アガペーに注意して下さい。 シナリオのあらすじ 紫音を救う手段をようやく見つけ、再度帝都に赴く。 紫音が眠る祠の近くは、未だにアバドンのエーテル汚染が色濃く残り、異界化している。 異界は紫音の精神世界でもあり、来る者を拒む。 そこに侵入し、紫音の記憶を垣間見て、最終的に紫音の元に行き、救い出す。 オープニングフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC4 伊音との会話 紫音を解放する手段が分かったと告げられるシーン 伊音「PC4。話がある」 伊音「私の妹、紫音を八門結界の人柱から解放する手段が、遂に見つかったんだ。我ら草薙家、八坂機関、そして八咫衆。ヤシマの三大機関の頭脳が結集した、十年間の研究がとうとう実を結んだんだ」 伊音「シュバルツ・メガグレイスを知っているか?」 伊音「二千年前の救世主が、死後姿を変えた、黒い天使核と同じ波長をもつ黒い巨石。正確には順序が逆だが」 伊音「救世主である、PC3。彼の力で、それと同じものを作り出し、紫音の代わりに結界の中枢に据える。そうすれば、結界を維持するのに、人柱が不要になる」 伊音「長かった……本当に、長かった。ようやく、紫音を迎えに行けるんだ。それでだ、PC4。紫音を迎えに行くのを、お前も手伝って欲しい。結界の要となる祠は今、異界と化していて、おいそれと立ち入ることが出来ないんだ」 伊音「PC3は勿論として、PC2、そしてPC1に声を掛けようと思っている。頼む、PC4。私の悲願である、十年越しの後悔を晴らす、手伝いをしてくれ」 頭を下げる伊音。 シナリオダーザイン【草薙伊音からの後悔】 シーン2 シーンプレイヤーはPC3 ヴィヴリオからの連絡が入るシーン 凍「……PC3、電話。ヴィヴリオ大佐から」 ヴィヴリオ『もしもし。久しぶりだな、PC3。元気でやっているか?』 ヴィヴリオはドライクロイツの指揮を後任に任せ、退役している。 ヴィヴリオ『お前にも協力してもらっていた、八門結界の人柱の代わりとなるものの研究。それがようやく、目処がついたそうだ。草薙紫音を、人柱の任から解放する目処が』 ヴィヴリオ『電話で話せるような、単純な話でもない。一週間後に、瑞穂基地に来て欲しい。PC4、PC2、PC1にも、来てもらえるよう、連絡する予定だ」 ヴィヴリオ『用件だけで済まんな。積もる話は、一週間後にするとしよう』 電話を切った後 凍「……ヴィヴリオ、何だって?」 凍「……私も、一緒に行く」 凍「……久しぶりに、みんなとも、会いたい」 凍「……十年は、長い。人が変わるには、十分な時間。……私も、そう」 凍も、口調こそ十年前と変わらないが、何に対しても無関心だった、感情も希薄だったあの頃に比べたら、感情豊かになったものだ。 凍「……あなたの持つ、奇跡の、力。使いどころ」 凍「……でも。もし、あの時に、その力が使えて、いたら。みんな、十年もの間、苦しまなかったのかも、知れない」 凍「……だから。みんなの、十年越しの後悔を、晴らしに、行こう」 シナリオダーザイン【○○凍からの信頼】 シーン3 シーンプレイヤーはPC2 伊音からの連絡が入った、と紀央から伝えられるシーン 紀央「お帰りなさいませ、PC2様。伊音様から、お電話がありました」 ※夫婦の場合は、PC2様、を旦那様、と言い変える。 紀央「紫音様を、八門結界の人柱から解放する目処がついたそうです。その解放作戦に、PC2様も参加して欲しい、とのことです」 紀央「紫音様は、期間こそ短いけれど、わたしの大切な友人なんです。わたしも、作戦に同行させて下さい。駄目と言われても、ついて行きますからね?」 紀央にしては、随分と強情だ。 だが、それだけ紫音を助けたいのだろう。 紀央「十年です。草薙家、八坂機関、八咫衆……その叡智を結集させて、その年月がかかってしまったんです」 紀央「きっと、紫音様も待ちくたびれていると思います。早く、迎えに行ってあげなくては」 紀央「迎えの主役は、伊音様とPC1様ですが……わたしの我儘かも知れませんが、一人の友人として、紫音様にお帰りなさい、って言いたいんです」 紀央「帰る場所がある、というのは素晴らしいことです。……わたしにとって、PC2様のお傍が、そうであるように」 シナリオダーザイン【司鏡紀央からの懇願】 シーン4 シーンプレイヤーはPC1 このシーンは、基本的にはPC1の独白シーンとなります。 キミはかつて、それが叶わぬ夢だと知りつつも、草薙紫音と将来を誓い合った仲だった。 紫音「……PC1様、お慕い申し上げております」 しかしキミには、二人が引き裂かれる運命を、変えることは出来なかった。 帝都の爆心地近くに作られた、特殊な呪術処理を施された小さな祠。 キミはその前に立っている。 紫音「PC1様、お慕い申し上げております。……いつまでも」 そう言って彼女は、祠の中へと入って行った。 そこで、キミは目を覚ます。 何度も見た夢。 もう手の届かない彼女、草薙紫音。 キミはあの日の後悔を、十年間、ずっと抱えて生きている……。 (ある程度独白のロールプレイをしたら) ヴィヴリオから、電話が掛かってくる。 ヴィヴリオ『もしもし。久しぶりだな、PC1』 ヴィヴリオ『単刀直入に言おう。草薙紫音を、八門結界の人柱から解放する目処がついた』 ヴィヴリオ『一週間後に、解放作戦を決行する手筈となっている。お前も参加してくれ』 ヴィヴリオ『では一週間後に、瑞穂基地で待っているぞ』 ようやく、この時がやってきた。 待っていてくれ、紫音。 やっとキミを、そこから救い出すことが出来る。 シナリオダーザイン【草薙紫音からの思慕】 ミドルフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 キミ達は何年ぶりかで勢揃いする。 紀央「お久しぶりですね、皆様」 伊音「ああ、紀央、久しぶりだな。PC2とは上手くやっているか?」 紀央「ええ、お陰様で」 凍「……私も、いる」 伊音「すまない、凍」 ヴィヴリオ「ふっ、まるで同窓会だな」 伊音「大佐殿、お久しぶりです」 ヴィヴリオ「大佐は止してくれ。もう軍からは退いた身だ」 伊音「そうでしたね。どうしても癖が抜けず、申し訳ない」 ヴィヴリオ「まあ、いいさ。……だが、今回集まった面子だと、一人足りん。どれ、欠席者を迎えに行こうではないか」 全員の顔が引き締まる。 ヴィヴリオ「お前達に今回集まってもらったのは他でもない。……八門結界の人柱となった、草薙紫音。彼女を人柱の任から解放する算段が、ようやくついた」 ヴィヴリオ「草薙家、八坂機関、八咫衆の協力と、PC3の力の解析により、誰も犠牲にせずに結界を維持する術が、ようやく見つかったんだ。だから、今更かも知れんが、お前達に声を掛けた」 紀央「そんな事はありません。わたし達は、紫音様を人柱にしてしまったた事を、十年間、一時(いっとき)たりとも忘れていません」 伊音「そうだとも。この日の為に、私はずっと……」 凍「……それで、どうやって、紫音を救うの?」 ヴィヴリオ「祠に赴き、PC3の力で、黒い巨石(シュバルツ・メガグレイス)の模造品を創り出し、紫音の代わりに据える」 ヴィヴリオ「PC3。お前なら出来る。あの日出来なかったことを、やって欲しい」 ヴィヴリオ「PC1、お前もだ。今回の作戦、お前がいなければ、絶対に成功しない。眠り姫を起こすのは王子様のキスだと、昔から相場が決まっている」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン2 シーンプレイヤーはPC2、全員登場 突入シーン。 帝都の、旧帝居に建てられた祠周辺。 いつの間にか鬱蒼と繁った木々の周りを注連縄が囲み、立ち入り禁止となっている。 この近隣は基本的に十年前から立ち入り禁止の区域ではあるのだが、殊にこの林は、神隠しに遭う、として恐れられている。 原因はアバドンの残留エーテル、通称『呪い』によるもの、というのがドライクロイツとヤシマ陸軍の共通見解だ。 実際、林の中は異界化しており、常人では数分ももたずに発狂か、最悪天使化するが、すぐに神域に張られた結界に浄化されて、消滅してしまうだろう。 紀央「結界を張りながら進みますが、息苦しさはどうにもなりません。皆様、ご注意を」 凍「……気持ち悪い」 伊音「……気を抜くと、気力をごっそり持って行かれるな」 これ以降のシーンは、シーン登場時のアガペー上昇が4D6となる。 意を決して林に入ると、林の中は見た目と違い、とても広大なものとなっている。 伊音「かなり広いな……これは、ぐずぐずしていられんな。最奥部を目指し急ごう」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン3 シーンプレイヤーはPC3、他のPCの登場は任意 記憶の欠片1:『お役目』 更に奥へと進んだキミ達の前に現れたのは、入り組んだ石造りの通路、所謂迷宮だった。 凍「……何、これ」 ※災厄《虚空の城塞》の演出である。 迷宮の踏破の為の判定 〈探知〉難易度3、〈運動〉難易度3 失敗した場合、アガペーを4D6上昇させた後に再挑戦する。 迷宮の中に浮かんだシャボン玉。そこに、何かが見える。 凍「……これ……紫音の、記憶?」 どうやらこれは、紫音の幼少時の記憶の様だ……。 草薙家当主『紫音。八門結界の構築を、我ら草薙家ではなく、東雲光子殿が行ったのは、草薙家にとって最大の恥辱である』 当主『ミカドに代々仕え、最強の暗殺者、武術家、そして陰陽師を代々輩出して来たのが、我ら草薙家。草薙は、常に『最強』でなければならない』 紫音『はい』 当主『紫音、既にお前は当代、いや、草薙家の歴史でも最高の術者。八門結界に何かあった際は、お前が、その任を担うのだ』 紫音『はい。紫音は、その日の為に、術を、技を磨いて参ります』 当主『うむ、それで良い。紫音、お前は草薙家の誉れだ』 紫音『(……紫音は、八門結界の人柱となることを定められた。これは、紫音にしか為し得ないこと。紫音の誇り。……紫音の全て、です)』 八門結界の人柱となる事。 それが彼女のアイデンティティであり、彼女には、それしかない。 凍「……誇り。……私には、よく、分からない。……何も、なかったから」 凍「……何も、なかった。実験を繰り返される毎日、何も、なかった。だけど……PC3と出会って……世界が、変わった」 凍「……PC1と、紫音は、変えられなかった。仕方ないことなのかも、知れない、けど……」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン4 シーンプレイヤーはPC4、他のPCの登場は任意 情報収集シーン 〈探知〉〈エーテル〉難易度3 強力なエーテルの反応を二つ感じる。 一つは紫音だが、もう一つは分からない。 この奥に、紫音以外の何かが潜んでいる。 紀央「紫音様以外の、何かがいます。正体までは分かりませんが……何か、悪しきものが」 伊音「急ぐぞ。この場所に何かが潜んでいるなど有り得ない。その有り得ないことが起きている。紫音の身に、何かあったに違いない」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン5 シーンプレイヤーはPC2、他のPCの登場は任意 記憶の欠片2:『言えなかった言葉』 迷宮は更に複雑になっている。 迷宮の踏破の為の判定 〈探知〉難易度5、〈運動〉難易度5 失敗した場合、アガペーを4D6上昇させた後に再挑戦する。 再び、迷宮の中に浮かんだシャボン玉。そこに、何かが見える。 紀央「……これもまた、紫音様の記憶、ですね。先ほどのものとは、違うようですが」 どうやらこれは、祠の中で眠りにつく前の、記憶の様だ……。 紫音『PC1様。あの時紫音は、あなた様と共に生きたいと、言えませんでした』 紫音『逃げ出したい、一緒に逃げて欲しい、さらって欲しい……でもそんな事を言ってしまえば、紫音が今まで積み重ねてきたこと、人柱となる為に鍛練して来たことも、御家のことも、自らの誇りも、何もかもを否定し、全て投げ捨てる事になります。だから、言えませんでした』 紫音『だから、この想いはいつか、自分の命が尽きるその日まで、胸に秘めておきます』 紀央「言えなかった、言葉。でも、誰が紫音様を責められましょうか」 紀央「紫音様はお強い方でしたが、13歳の女の子だったんです。今までの自分を全て否定し、何もかもを捨てる覚悟なんて、出来なくて当然です。今のわたしだって、そんなことは出来ません」 紀央「わたしは、幸せを知ってしまった。だから、余計にそう思います」 紀央「だから今度は、紫音様が幸せを知る番なんです。もういいんだよって、幸せになっていいんだよ、って」 (PC1が登場している場合、この描写を追加)紀央「それが教えられるのは、他の誰でもない、PC1様だけなんです」 紀央「早く、紫音様の元に行きましょう。一分一秒でも早く、紫音様をお救いしなければ。紫音様は、こんな寂しい所に独りぼっちで、十年も我慢したんですから」 会話を終えたらシーンを終了する。 シーン6 シーンプレイヤーはPC1、全員登場 紫音の元に辿り着き、紫音を起こすシーン。 異界の最深部は、異常なまでに広い空洞となっている。 シュネルギアはおろか、ホルテンが入っても尚余りある広大な空間だ。 伊音「なんだ、この空間は……」 紀央「今までもそうでしたが、強力なエーテルによって空間がねじ曲げられ、拡張されています。……恐らく、ですが……紫音様の、心象風景かと。ここは、何もない、空っぽの……大きな、虚無感」 伊音「では、ここに至るまでの複雑な道のりは……」 紀央「心に鍵を掛け、でも一縷の望みを持っていた、という心の現れではないかと。全てを拒むのであれば、壁を作って誰も入れなくすれば良いのです。でも、一本だけ、道は繋がっていた」 伊音「……何故、何故、言ってくれなかったんだ、紫音……」 紀央「……わたしの勝手な意見ですが。全てを投げ捨てる覚悟がなければ、出来なかった、と思います。ですが、誰が紫音様を責められましょうか」 伊音「……そうかも知れん、だが……私たちは、たった二人の、血の繋がった姉妹だったんだぞ!?」 凍「……だからこそ、言えなかった、と思う。迷惑、かけたくなかったから。……私にも、身に覚え、あるし」 祠の周りには、紫苑の花が咲き乱れている。 そして祠の中には、あの頃のままの姿の、紫音が眠っていた。 伊音は紫音に近付き、声をかける。 伊音は優しい声で「……紫音、起きろ。約束通り、迎えに来たぞ」 だが、紫音は目を覚まさない。 伊音「ヴィヴリオ大佐の言った通り、眠り姫には王子様のキス、か……。PC1」 PC1が何らかのアクションを紫音に対して行うと、紫音は目を覚ます。 紫音は身体をゆっくりと起こし「……此処は……紫音はとうとう、天に召されたのでしょうか?PC1様の幻が、見えます」 伊音「……違うぞ、紫音。私たちは、お前を迎えに来たんだ」 紫音「……その声は……姉様?しかし、そのお姿は……」 伊音「……十年だ。お前が人柱となってから、十年が過ぎた」 紫音「十年……では、皆様が此処に来た、ということは……合衆国との戦い、勝利されたのですね。おめでとうございます」 伊音「ああ、だが、私たちには一つ、悔いが残っていた。……お前を人柱にしたことだ」 紫音「……それが、紫音のお役目でしたから」 伊音「だが、それももう終わりだ。お前を、人柱の任から解放する」 ??『そうはさせんぞ』 伊音「何奴!」 一陣の風が巻き起こり、祠の周りに咲いていた紫苑の花が集まって、一つの影を形成する。 ??『我が名はアポルオン……アバドンの影なり。アバドンの遺した我は、この娘のエーテルを人知れず吸い、復活に備えてきた。この娘が目覚めたことで、我も不完全ながら復活した』 アポルオン『この娘の孤独と後悔が、消え行く運命だった我を引き寄せた。この異界も、この娘の心を映した、何人をも拒む迷宮よ』 紫音「そんな……紫音は……」 紀央「……ふむ、あなたのせいで、祠の周囲が異界化していた訳ですね」 アポルオン『その通り。では、手始めに汝らを喰い尽くし、我は完全復活する。この娘はその後のお楽しみだ』 紀央「させません!急急如律令!」 紀央の放った術が弾かれる。 紀央「なんて強度のケルン……!」 凍「……術が駄目なら」 凍が銃で撃つが、それも弾かれる。 伊音「おのれ……皆、紫音を救う為に、力を貸してくれ、頼む!」 会話を終えたらシーンを終了する。 何故天使がコミュニケーションを取れたか疑問が発生した場合は、紫音の力を吸収したことで『智恵』を得た為、とここではしておく。 クライマックスフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC2とPC4 アポルオンとの戦闘。 《エヴァU》を使用すれば、ここにシュネルギアやヴィークルを呼び寄せることが出来る。 使用しない場合、シュネルギアやヴィークルなしでの戦闘となる。 その場合でも、ギアドライバーのナビ修正は有効となる。 アポルオン 種別:天使(上級) HP:400 【肉体】30 【感覚】22【理知】22 【聖霊】22 【階級】0 行動値:11 あらゆる技能5レベル ただし回避はしない 《黒い太陽》 黒いエーテルの光を放つ攻撃。 判定値22 技能レベル5 ダメージ+27 射程:視界 白兵攻撃、射撃攻撃に突き返し出来る 《範囲攻撃》 《ケルンU》 対天使効果のない武器によるダメージ無効 《奇跡》×5 《神罰》×2 《疾風怒濤》×2 《星を落とす者》×1 マイナー直前に宣言、射程:視界、対象:場面 《時空を砕く者》×1 メジャー直前に宣言、射程:視界、成功数+20 《黒き業炎》×1 《至高天の誘い》×1 《虚空の城塞》×1 異界を作る為に使用済、誰にでも入れるが出られない、解除方法はアポルオンの撃破 《魂の牢獄》×1 異界に紫音を縛り付ける為に使用済、解除方法はアポルオンの撃破 シーン2 シーンプレイヤーはPC1とPC3 福音フェイズ アポルオンを撃退したキミ達に、紫音が頭を下げる。 紫音「……皆様、お見苦しいところをお見せしました。先程のアポルオンは、紫音が創り出したもの」 紫音「使命と、寂しさと後悔との板挟みになり、逃避の為に創り出した幻影。だから、アバドンと同じ姿をしていたのです」 伊音「なぜ天使と意志疎通が出来るのか、と少し気にはなっていたが……そういう事だったのか」 紫音「祠の周りの、紫苑の花は……紫音の好きな花であり……紫音の、心を映したもの。『君を忘れない』『追憶』、そして……鬼の醜草(おにのしこぐさ)」 紫音「こんな、性根の醜い女ですが……本当に、よろしいのですか?」 伊音「いいんだ、紫音……もう、そんな事を言わないで、いいんだ……」 紫音の言葉に対し、PC1が何らかのリアクションを返したら、場面を進める。 その時、恐ろしい地響きがする。 紀央「紫音様が目覚めたことで、異界が揺らいでいます。このままでは、私たちはここに閉じ込められてしまうでしょう。そして八門結界も、要を失ったことで崩壊してしまいます」 伊音「さあ、早く人柱の代わりを据えて、ここから脱出するぞ!」 紫音「皆様、再びの、お別れの時でございます。もう一度皆様に会えて、紫音は嬉しゅうございました」 伊音「紫音!駄目だ、お前も行くんだ!」 凍「……今回の、私たちの、使命は。八門結界を維持したまま、紫音を救い出すこと。PC3、出番」 〈エーテル〉難易度99か《エヴァU》により、黒い巨石の模造品を作り出し、紫音の代わりにすることで、結界を維持することが出来る。 判定に失敗、あるいは判定しない場合、紫音はその場に残って結界を維持する。 これ以降の描写は、紫音を救出したものとして描写する。 救出出来なかった場合、エンディングはPLと相談して描写を行うこと。 紫音「……いいのですね。紫音は、ここから出て」 伊音「勿論だとも。積もる話は後だ。改めて、ここから脱出だ!」 脱出に改めて判定は必要ない。 気付けば、頭上に空がひらけている。 キミ達はホルテンに乗り込み、迷宮から脱出した。 エンディングフェイズ シーン1 シーンプレイヤーはPC4 伊音と紫音との会話 伊音「改めて。……おかえり、紫音」 紫音「……ただいまです、姉様、PC4様」 紫音「十年間、姉様にお辛い想いをさせてしまったようで、申し訳ありません」 伊音「……ああ。だが、それはもういい。紫音、こうやってお前は帰って来てくれたんだ。何も言うことは無い」 紫音「PC4様も、姉様をずっと支えて下さって、本当にありがとうございます」 紫音「……そう言えば、姉様とPC4様、お二人は今どうなさってるのですか?」 伊音「そう急くな。これから、時間は幾らでもあるんだ。近況報告なども、ゆっくりやれば良いではないか」 紫音「……そう、でしたね」 そう、あの時と違い、時間は幾らでもある。 姉妹の失われた時間を取り戻すのも、ゆっくりやっていけばいい。 シーン2 シーンプレイヤーはPC3 凍との会話 救世主の責務について話し合う。あとそれと。 凍「……PC3、救世主であるあなたには、この世界を、人々を守らなければならない。……今回みたいに」 凍「……それは、PC3が望んだ結果じゃ、ないかも知れない。でも、世界を救ったあなたには、その責務がある」 凍「……そして、また一つ、あなたの守らなければならないものが、増えた」 凍「……デキた」 は?デキた、って、まさか? 凍はこくりと頷く。 凍「……この子の為にも。……頑張れ、お父さん」 彼女に宿った、新しい命。 それは、平和の象徴でもある。 キミは想いも新たに、この世界を、この子を守ると決めた。 シーン3 シーンプレイヤーはPC2 紀央と紫音との会話 旧交を深め合うシーン 紀央「おかえりなさいませ、紫音様」 紫音「……ただいまです、紀央様、PC2様」 紫音「……紫音と友人としての期間は短かったのに、どうしてここまでしてくれたのでしょうか?」 紀央「期間なんて関係ありません。友達は友達です。ね、PC2様?」 紫音「……ありがとう、ございます。友人と呼べる者がほとんどいなかったものですから、どうしてか分からず、気になってしまって」 紀央「それを知るのは、これからでも遅くないです。ちょっと歳が離れちゃいましたけど、些細な問題です」 ※元々紀央が17歳で紫音は13歳、十年経ったので紀央は27歳だが、紫音は13歳のまま時が止まっている、という設定となる。 紫音「はい。紫音に、友達とは何たるかを、教えて下さいまし。紀央様、PC2様」 紀央「そんなに堅苦しくなくていいんですよ。手始めに、様、をとって呼んでみていただけませんか?」 紫音「……紀央、さん。PC2、さん」 紀央は頷いて「それでいいんです。ね、PC2様?」 友情は、これから改めて、育んでいけばいい。 何、時間はたっぷりある。 シーン4 シーンプレイヤーはPC1 紫音との会話 今キミは、紫音と二人、向き合っている。 紫音はあの頃と何ら変わらない、真摯な眼でこちらを見つめている。 紫音「……PC1様。改めて、お久しぶりでございます」 紫音「十年……眠っていた紫音には、一瞬の出来事でございましたが……あなた様には、そうではない」 紫音「心変わりされても、仕方のないこと。紫音のことは、もうお忘れになって下さいまし」 紫音「こんな、時代遅れの女でも、よろしいのですか?」 紫音「……今度は、離れません。絶対に。……不束者ですが、末永く、よろしくお願いいたします」 彼女は三つ指ついて、頭を下げる。 十年遅れてしまったが、キミ達の未来は、ここからもう一度始まるのだ。 あとがき Twitterで知り合った、かも。さんと話してて素晴らしいシナリオフック頂いたので、作ったシナリオです。 全てを救えなくてもいい。その後悔を抱えながら生きていけ。その後悔を、晴らせる日が来るまで。 そんな思いで書いたシナリオです。 紫音と同じ音を持つ紫苑の花の花言葉が『追憶』『君を忘れない』だったので、こりゃ使えるな、と思ってシナリオに仕込んでみました。 タイトルに使った『Aster』も、紫苑の花の学名からとっています。 ボスのアポルオンは、アバドンの別名です。 尚シナリオ書いてて、これ女神転生かペルソナだなーと思いながら書いてました。 アポルオンは紫音のシャドウとして描写してますしね。 俺のメガテニストとしての血がそうさせたんや……。